🦜もとめられる言語化

はじめに

プロジェクトのリーダーをしていると「あれ、これメンバーに伝わってないかも…？」と感じる場面があった。

• 説明を聞いているメンバーの反応がいまいちだったり、後々聞き返されることがあり、「上手く伝えられていないな」と感じる
• 説明を求められた際に「どう説明すれば良いんだろう？」と、言葉にできずモヤモヤすることが多い

そのような経験が重なるうちに、上手く説明するための「言語化」を考えることが多くなった。

そもそも「言語化」とは何なのか？なぜ難しいと感じるのか？

自分なりに整理してみる。

対象読者

整理してみたが、抽象な話で終わってしまったので、下記のような人を仮の対象読者とした。

• 言語化が気になる人
• 「なんとなく伝わっていない気がする」にもやもやする人
• 自分の思いや考えをもっと上手に言葉にしたいと思っている人

言語化とは

個人的な定義になるが、言語化は「思っていることを言葉にする力」だと思っている。

もっと深堀りするなら「頭の中にある情報や概念を他者に伝わるように言葉にする力」だろうか。

例えるなら頭の中にある情報を脳を用いて構造化し、相手に伝わるように翻訳する作業だ。

構造化という表現を用いたのは、言語化は単なる記憶力の高さだけではなく、塊としての情報を自分の中で再構築や細分化し、連想ゲームのようにつなげていく力が必要だと考えているため。

自分が言語化を難しいを感じている点として、「自分で構造化できていない情報は伝わらない」し、「相手が望む形の情報への整理の仕方」がわからないからだと思う。

物事を理解する

言葉を組み立てるうえで、記憶力の高さはもちろん重要だと思うが、それだけでは言語化するには難しい。

なぜなら、言語化するには物事を「理解」する必要があるからだ。

個人的な理解の解釈としては以下になる。

あらゆる物事¹に対する発生・過程・結果を人に対して説明、あるいは再現²することができる状態のこと。

理解とは、「物事が構造として整理され、他者に説明/再現できる状態」のこと。

物事の構造化

物事の構造化が行えると、「〇〇の原因は△△で、△△によって□□が発生したことで✕✕という事象が発生した。」というように、物事に対して筋道を立てて説明ができる。

実際のコミュニケーションでは、共通の認識や知識があればもう少し短くなったりするが、他者に説明できる/再現できるというのは物事の「記憶」とは違う「理解」だと考えている。

• 「記憶している」だけでは断片的で、それ自体では使えない。
• 「構造化」された「物事」は、他者へ伝達できる情報になっている。

逆説的になってしまうが、構造化されていることによって時間軸や世界線が異なる物事が整理され、関係性や目的が明確になるという副次的な効果もある。

とっさに話せないことの原因

「なんとなくわかっているが、説明しろと言われると難しい」状態は、本質的にはまだ「理解」できていない状態だと考えている。

情報が断片化されており、なぜそうなっているのかが説明できない状態だからだ。

「とっさに話せない」のは、自分の中の構造が曖昧であるが故に説明できないためであり、相手が望む形に再構築することもできない。

冒頭にも記載した通り、「言語化」は「頭の中にある情報や概念を他者に伝わるように言葉にする力」なので、情報を自身の中で構造化しつつ、他者に合わせて「組み直す」スキルも求められる。

納得とは

本記事の主題とは少しそれるが、「言語化」を考えるうえで、どうしても触れておきたいものがある。

それは「納得」という感覚だ。

自分の中では、「納得」は理解するだけでなく、理解をきちんと自分の中に落とし込めた状態だと考えている。

言い換えるなら、納得は「自分の中に受け入れることができた状態」だろう。

人は感情のある生き物なので、「理解できたこと」と「納得したこと」は必ずしも一致しない。

「理解はできるけど、納得できない」という状態が自分の中に発生する時があるので、「納得」についても言語化をしてみる。

納得における論理と感情

実体験を含めて振り返ってみると、納得の中にも種類があると考えている。

ひとつは話の仕組みがロジカルで、「そういうことか」と腑に落ちるような「論理的な納得」。

もうひとつは、話の中でコンテキストや思いが伝わってきて「なるほど、感情として理解できる」と思える「感情的な納得」。

それぞれの境界を引くとすれば

• 仕組みなどを論理的に理解できた状態を論理的な納得
• 意見や背景などを感情的に理解できた状態を感情的な納得

となる。

自分の中で「理解」と「納得」は少し異なっていて、理解は「情報を構造化できている」に対し、納得は「理解に対して肯定できている状態」という感じだ。

同じ内容の説明であっても、発言する人によっては納得する/しない場合があるなどは「感情的な納得」に含まれるし、感情の部分で引っかかっているということだと思う。

「モヤモヤ」「違和感」とは一体何なのか

• 「なぜかこのまま進めるとまずい気がする」という感覚
  • 「この進め方、なんかひっかかるな…」
• 提示された案に対して「どれもピンとこない」状態
  • 「説明として通ってはいるけど、絶妙に腑に落ちないな…」

「感情的に納得」できない場合など、多くは上記のような「モヤモヤ」「違和感」といった形で残ることが多い。

論理的ではないし、もはや感覚としてしか感じ取ることができないような「モヤモヤ」「違和感」とは一体何なのか。

それは言語化されていない感情や価値観が、何かしらとぶつかった際に生じるノイズのようなものだと思っている。

決して論理的に説明できるとも限らないし、明確な形や答えを持っているわけでもないので、曖昧だからこそ「モヤモヤ」「違和感」としてしか認識できない。

感覚と言語化の接点

では「モヤモヤ」「違和感」とはどのように向き合っていくのか？そもそも向き合う必要はあるのか？

感覚は論理的ではないことがあるし、論理的なモノを扱う以上「個人の感覚だしな…」とスルーしてしまうことも多い。

しかし、あとから振り返ると「モヤモヤ」「違和感」にはきちんと意味があった場合が多かったと感じている。

故に、「モヤモヤ」「違和感」は単なる気分などの問題ではなく、「顕在化されていない自分自身からのアラート」として耳を傾ける必要がある。

ある意味自分自身からのエスカレーションでもあり、抱えている自分自身に対してネガティブだと思えてしまうかもしれない。

だからこそ、感情の曖昧さを敬遠せず、言語化することで向き合う必要がある。

違和感や感情を言語化することで、本質的な問いや改善の種になることもあるからだ。

論理と感情の天秤

我々エンジニアは論理的な仕組みで動くモノを扱っているが、それを利用するのは感情を持つ生き物の人間なので、全てが論理的でない場合もある。

寧ろ「これを良くしていきたい」や「これはどうしてこうなっているのか」など、論理的な発明や弁論の発生は感情起因なことも多分にある気がする。

特に会議や論争でよくある傾向として気を付けたいのは、相手の背景や事情などを理解しないといけないということ。

相手の背景や事情などを理解しないと、どのような論理的な説明であっても聞き入れてもらえないようなことがあるということ。

意見の対立や批判は必ずあるものとして、相手も自分も納得できるような落とし所を見つけたいし、「納得できない自分をどう扱うか」も決めておくと悩まずに済むことが多い。

「納得できない自分」が抱える感情的なモヤモヤも、言語化していくことで切り分けができるので、やはりできるに越したことはないと考えている。

例えば「言語化されていない感情の発露」の場合、自分が大事にしている価値観や信念との相違であることに気づくことができ、自身の価値観を見直すきっかけになりえる。

例えば「違和感」の場合、自分だけが気づいているだけで顕在化されていないリスクであると気づくことができ、アラートやエスカレーションすることで防ぐことができる。

総じて言えば「理解」と「納得」を切り分けたり、言語化することで自己対話や対人関係の質を上げられたりするのではないかと考えている。

特に現場の感覚やスキルを踏まえたリーダーであれば、現場の感情や感覚を持ちつつ、複雑なコミュニケーションを取り、論理と感情のバランスを取りながら言語化ができると理想だと考えている。

まとめ

• 情報を「構造化」することで「理解」できる。
• 他者に伝えるには感情的な「納得」も踏まえた言語化が理想。
• 「相手に伝わる言葉」は、論理と感情の橋渡しである。

脚注